[家族が活用]
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[自分の土地]
<ポイント>
(所得税)
・簡易な駐車場の場合の所得は、家族の所得とはならず、自分の不
動産所得となる。家族に収入を入れている場合は、必要経費に該
当するものを除き、贈与税の対象となるので注意したい。
・堅固な駐車場及び事業所得となる駐車場の場合は、家族の所得と
なる。
(キャッシュフロー)
・設備投資が少ない分リスクも少ないが、その分キャッシュフロー
も少ない。ただし、キャッシュがショートするケースも少ない。
・堅固な駐車場の場合は、投資額にもよるが、一般に家族にキャッ
シュが残る。
(相続税)
・土地の評価は家族が活用しても変わらない。
・青空駐車場の場合は小規模宅地等の特例がない。
・アスファルト舗装などをした駐車場で一定のものについては事業
用宅地として50%の減額特例が受けられる。
・家族の手元に残ったキャッシュは納税資金等に活用できる。
@所得税関係
所得税関係では、この所得が不動産所得になるのか事業所得になるのか、また、どんな駐車場をするのかによって所得の帰属者が違ってきますので注意してください。
A相続税関係
このケースの場合、土地の評価額は基本的に変わりませんが、アスファルトなどの構築物となる施設を設けた場合で一定の場合は、小規模宅地等の特例が受けられることとなりますので、その場合には評価額が下がることとなります。
自分の土地を家族が駐車場として活用する場合に、よく問題となるのが
その収益が誰のものかという点です。
これについては、所得が誰に帰属するのかという点とその所得が何所得
になるのかというのがポイントとなります。
所得が誰に帰属するかは、所得税では、次のように規定されており、い
わゆる実質所得者課税主義が採られています。
実質所得者課税とは、資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属すると
みられる者が単なる名義人であってその収益を享受せず、その者以外の者
がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属す
るものとして課税するというもので、その判定は資産から生ずる収益か事
業から生ずる収益かによって次のように取り扱うとされています。
@資産から生ずる収益の帰属者
資産から生ずる収益を享受する者が誰であるかは、その収益の起因と
なる資産の真実の権利者が誰であるかにより判定すべきであるが、それ
が明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるもの
として取り扱う。
A事業から生ずる収益の帰属者
事業から生ずる収益を享受する者が誰であるかは、その事業を経営し
ていると認められる者(事業主)が誰であるかにより判定する。
したがって、所得の帰属者を判定するには、駐車場経営にかかる所得が
事業所得に該当するのか、あるいは不動産所得に該当するのかをまず見極
めておかなければなりませんが、これについては、次のように取り扱うこ
ととされています。
つまり、駐車場にかかる所得が不動産所得となる場合は、「収益の起因
となる資産の真実の権利者」が収益の帰属者と判断され、事業所得となる
場合は「事業主」が収益の帰属者として判断されるのです。
@不動産所得となる場合
イ.所得の帰属
では、たとえば、本人の土地に家族がアスファルトを敷いて駐車場経営
をした場合はどうなるでしょう。
管理人などを置かない駐車場であれば、その所得は不動産所得となり、
収益の起因となる資産の真実の権利者が所得の帰属者となりますが、これ
については次のように取り扱われています。すなわち、このような場合、
形式的・表面的には家族が駐車場使用者から使用料を収得しているように
見えるが、税務上は土地の真実の所有者である本人が使用料を収受し、そ
れを家族に処分させているだけで、家族は処分の一形態としてその分配に
あずかっているに過ぎない。したがって、所得は土地の真実の所有者であ
る本人に帰属する。また、「資産から生ずる収益の帰属者」を判定する場
合の収益の起因となる資産とは、アスファルト部分ではなく土地であると
認識されているのです。
したがって、土地にラインを引いただけの青空駐車場は言うに及ばず、
家族が簡単な構築物を設置して駐車場経営しているという場合の所得は、
家族に帰属せず土地所有者である本人の所得に帰属するものとして取り扱
われることとなるのです。この点、間違いやすいので注意が必要です。
ロ.家族の収入の取扱い
なお、このような場合において、この駐車場の収入を家族の収入として
いるときは、家族が消費した金額のうち家族が行った駐車場の管理業務
(適正金額)及び家族が設置したアスファルト等の構築物の使用の対価を超
える部分については、土地所有者である本人からこの家族に対して贈与し
たものとみなされることとなります。
A事業所得となる場合
一方、管理人などを置き、車を預る駐車場のような場合は、事業所得と
なるので、事業主に収益が帰属することになります。したがって、このよ
うな場合は、アスファルトなどを敷いただけの駐車場であっても、そのア
スファルトを敷いた家族の所得となります。
また、家族がアスファルトのような簡易な駐車場でなく、立体駐車場や
自走式の駐車場など堅固な設備を有した駐車場(管理人なし)をする場合の
その所得は家族の不動産所得となります。これは、その設備を有する駐車
場から収益が生ずると考えられるからです。
管理人を置いて車を保管する場合は、もちろん、事業所得となります。
@駐車場用地の評価単位と評価方法
駐車場として利用している土地は、原則として雑種地として扱われます。
登記簿上の地目が宅地であっても財産評価上は雑種地となり、利用単位
となっている一団の雑種地ごとに評価します。
その評価方法は、駐車場の用に供している土地は、宅地と類似している
ことから、宅地の評価方法を準用して評価することとされています。した
がって、その宅地の所在する地域が路線価地域であれば路線価、倍率地域
であれば倍率を用いて評価することとなります。
A駐車場用地の評価
自分の土地を家族が駐車場として活用する場合の土地の評価は、その貸
借が使用貸借であっても賃貸借であっても、次のように自用地評価となり
ます。
※1駐車場が建物となる場合は、2の自分の土地に家族が建物を建築する
ケースを参照してください。
※2本人と家族で地上権を設定する場合は、3の自分の土地を同族会社が
活用するケースを参照してください。
B相続上のメリット
自分の土地が更地のままである場合の土地の評価は、自用地評価となり
ます。また、家族がこの土地を駐車場として活用した場合も同じく自用地
評価となります。つまり、自分の土地を家族が駐車場として活用した場合
には、財産評価上のメリットはないということです。ただし、一定の場合
には小規模宅地等の特例が受けられますので、その場合には、評価が下が
ることになります。
小規模宅地等の特例となる宅地等は、相続開始の直前において、被相続
人又は被相続人と生計を一にする親族の事業の用に供されていた宅地等の
うち、一定の建物又は構築物の敷地の用に供されていたものであることと
されており、この場合の事業には、事業と称するに至らない不動産の貸付
け(駐車場も含まれる)その他これに類する行為で相当の対価を得て継続的
に行うものが含まれるとされています。
つまり、この適用が受けられるかどうかは、@被相続人又は生計を一に
する親族の事業の用に供していたかどうか、A構築物の敷地であるかどう
か、B相当な対価のやりとりがあったかどうかがポイントとなるわけです
が、自分の土地に家族が駐車場をする場合の適用をまとめてみますと次の
ようになります。
イ.青空駐車場の場合
青空駐車場
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[自分の土地]
小規模宅地等の特例は、構築物の敷地でなければならなりません。したがって、構築物のないいわゆる青空駐車場はこの特例の対象になりません。
※アスファルトやコンクリートで舗装している駐車
場は構築物のある駐車場に該当しますので、ロ及び
ハを参照してください。
ロ.自分と生計を一にする親族の所有する構築物がある場合
イ.生計を一にする親族が事業を行っている場合
@生計を一にする親族が駐車場経営を行っている場 合・・・その敷地は事業用宅地等に該当し、50%減額の対象となります。
Aこの駐車場を他者に相当な対価で貸付けている場合・・・その敷地は事業用宅地等に該当し、50%減額の対象となります。
ロ.本人が事業を行っている場合
本人が駐車場経営を行っている場合は、その敷地は
事業用宅地等に該当し、50%減額の対象となります。
ハ.自分と生計を別にする親族の所有する構築物がある場合
イ.生計を別にする親族が事業を行っている場合
小規模宅地等の特例は被相続人(自分)又は被相続人と生計を一にする親族が事業の用に供していた土地に対して適用されます。したがって、生計を別にする親族の事業の用に供していた土地には適用があり
ません。
ロ.自分が事業を行っている場合
@構築物の貸借が無償である場合・・・その敷地は
事業用宅地等に該当し、50%減額の対象となります。
A相当な対価で賃貸されている場合・・・生計を別
にする親族が事業の用に供していることとなるので、
適用対象になりません。
ハ.生計を一にする親族が事業を行っている場合
@構築物の貸借が無償である場合・・・その敷地は
事業用宅地等に該当し、50%減額の対象となります。
A相当な対価で賃貸されている場合・・・生計を別
にする親族が事業の用に供していることとなるので、
適用対象になりません。
B本人と生計を別にする親族との間で相当な対価の
支払がある場合・・・その敷地は事業用宅地等に該
当し、50%減額の対象となります。
生計を一にするとは、日常生活の糧を共通しているか、いいかえれば、消費段階において同一の財布のもとで生活しているかを社会通念に照らして判断するものであり、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではなく、次のような場合は、それぞれ次のように扱うとされています。
@勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居をともにしていない親族がいる場合であっても、次に該当するときは生計を一にするものとする。
イ.他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇にはその親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ.これらの親族間において、常に生活費等の資金、療養費等の送金が行われている場合
A親族が同一の家屋に起居している場合は、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする