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大阪の税理士 三輪厚二税理士事務所

U.不動産譲渡と税務

 

 

1.譲渡所得の概要


所得税法では、資産の譲渡にかかる所得を譲渡所得として、所得税を課すことととしていますが、その譲渡した資産が土地等建物等である場合には、その土地等建物等の保有期間により長期譲渡所得又は短期譲渡所得に区分して、それぞれ他の所得と分離して所得税を課すこととしています。

1.長期と短期の区分
長期譲渡所得となるか短期譲渡所得となるかの区分は、次によります。

※「5年以内」とは、その取得の日以後同日の5年目の応当日の前日までの期間をいいます。

2.分離課税の区分


所有期間に応じて区分された譲渡所得は、譲渡目的やその譲渡資産の内容によって、次のように区分されます。

 

3.分離課税の計算方式


イ.長期譲渡所得(一般分)に対する課税
一般の長期譲渡所得に対する課税は、次のとおりです。

※20%の税率は、平成16年1月1日以後の長期譲渡所得に対して適用されます。


ロ.長期譲渡所得(特定分)に対する課税
特定分となる長期譲渡所得に対する課税は、次のとおりです。



ハ.長期譲渡所得(軽課分)に対する課税
軽課分となる長期譲渡所得に対する課税は、次のとおりです。



ニ.短期譲渡所得(一般分)に対する課税
一般の短期譲渡所得に対する課税は、次のとおりです。

※36%の税率は、平成16年1月1日以後の短期譲渡所得に対して適用されます。


ホ.短期譲渡所得(軽課分)に対する課税
軽課分となる短期譲渡所得に対する課税は、次のとおりです。


4.譲渡所得とみなされる場合


所得税では、資産の譲渡とは、売買以外の有償譲渡のほかに、次のようなものも譲渡として取り扱われます。
イ.法人に対する贈与
ロ.法人に対する低額譲渡
ハ.法人への借地権の無償返還で次の事由に該当しないもの

イ.借地権の設定契約書に借地権が将来無償で返済することが定められていること
ロ.借地上の建物が老朽化して借地権が消滅した、又は存続不可能となったこと
ニ.借地権の設定に伴い受け取る権利金でその土地の価額の2分の1を超えるもの

5.土地等の譲渡とみなされる株式の譲渡とは


次の譲渡で、その譲渡による所得が事業譲渡類似の有価証券の譲渡による所得に該当するものは、土地等の譲渡とみなして課税されます。

(事業譲渡類似の有価証券の譲渡による所得)
事業譲渡類似の有価証券の譲渡による所得とは、株式又は出資の譲渡(上場株式など取引相場のあるものを除きます)をした場合で、次の要件のいずれにも該当するときのその年におけるその株式又は出資の譲渡による所得をいいます。

イ.譲渡をした年以前3年内のある時点において、その法人の株式又は出資の30%以上がその法人の特殊関係株主等(株主、社員、会員、組合員、出資者、これらの人の親族、その他これらの人と特殊た関係がある人をいいます。)によって所有されていたこと

ロ.その法人の株式又は出資を譲渡した人がその法人の特殊関係株主等であること

ハ.その年においてその法人の特殊関係株主等の譲渡した株式又は出資がその法人の株式又は出資の5%以上に相当し、かつ、その譲渡をした年以前3年内の譲渡と合わせると15%以上に相当すること

 

6.譲渡の時期とは


譲渡所得の収入金額に計上すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日によりますが、譲渡に関する契約の効力発生日とすることもできます。また、農地等で権利の移転について許可が必要となるものの譲渡である場合は、その農地等の引渡しがあった日を原則としますが、契約が締結された日によることも認められます。この場合には、譲渡した資産の譲渡代金が、一部未収である場合でも、その全額をその譲渡すべき年分の譲渡収入として計上しなければなりません。

 

7.譲渡資産のうちに長期保有資産と短期保有資産がある場合


一の契約で譲渡した資産のうちに長期保有資産と短期保有資産とがある場合で、それぞれの資産の譲渡価額が明らかでないときは、それぞれの譲渡所得の収入金額は、その譲渡にかかる収入金額の合計額をそれぞれの譲渡資産の譲渡時の価額の比によって按分して求めます。
また、譲渡費用についても個々の譲渡資産との対応関係が明らかでないものがあるときは、その譲渡費用の額をそれぞれの資産にかかる収入金額の比で按分するなど、合理的な方法によってそれぞれの資産にかかる譲渡費用の額を計算します。ただし、この場合において、当事者の契約において、それぞれの譲渡資産に対応する収入金額が区分されており、その区分がおおむね時価の比によって適正に区分されているときは、それによります。

 

8.譲渡資産の取得時期とは


譲渡所得は、長期譲渡所得か短期譲渡所得かということで、税率が違い、譲渡者の税負担が異なってきますので、譲渡資産をいつ取得したかという、いわゆる取得時期の判定が重大な問題となってきますが、税務では、取得時期の判定について、取得原因や方法などにより、次のように取り扱うこととしています。

 

9.取得費とは


イ.土地建物等の取得費
譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、原則として、その資産の取得に要した金額(取得価額)、設備費及び改良費の金額の合計額とされています。

取得費=資産の取得に要した金額+設備費+改良費

※譲渡資産が家屋等の減価償却資産である場合には、償却費相当額(10を参照してください)を控除した金額が取得費とされます。
なお、取得に要した金額とは、資産を取得した時の購入代金や製作原価にその資産を取得するために、直接要した費用などを加えた金額をいい、次のようなものが該当します。また、設備費とは、資産を取得した後で付加した設備の費用をいい、改良費とは、資産を取得した後で加えた改良の費用で通常の修繕費以外のものをいいます。

イ.他から購入した資産にあっては、買入代金のほか買入手数料、登録免許税、不動産取得税、土地の取得に対して課される特別土地保有税など

ロ.自分で建設などをした資産にあっては、建設や製作などのために要した材料費、労務費、経費

ハ.住宅や工場などの敷地を造成するために要した宅地造成費用(造成費用は、
土地の取得費に加算されます)

ニ.土地建物等を使用していた者に支払う立退料

ホ.借地権の設定に伴う権利金、更新料など

ヘ.資産を取得するための借入金の利子のうち、その借入金の借入れの日からその資産の使用開始の日(資産の取得後その資産を使用しないで譲渡した場合には、譲渡の日)までの期間に対応する部分の金額(事業所得などの必要経費に算入されたものは含みません)。

ト.土地を建物付きで取得し、その建物等を取得後おおむね1年以内に取り壊すなど当初からその土地を利用する目的であることが明らかである場合には、その建物等の取得に要した金額及ぴ取壊しに要した費用の合計額(廃材がある場合はその処分価額を差し引いた額)は、土地の取得価額となる

チ.いったん締結した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支払う違約金(事業所得などの必要経費に算入されたものは含みません)。

リ.その取得につき争いのある資産について、その所有権などを確保するために直接要した訴訟費用又は和解費用など(事業所得などの必要経費に算入されたものは含まれません) 


ロ.借地権の取得費
借地権の取得費には、土地の借地契約に当たり、借地権の対価として土地所有者又は借地権者に支払った金額のほかに次に掲げるような金額を含みます。ただし、イに掲げる金額については建物等の購入代価のおおむね10%相当額以下の金額であるときは、建物等の取得費に含めることができます。

イ.土地の上に存する建物等を取得した場合の建物等の購入代価のうち、借地権の対価と認められる部分の金額

ロ.賃借した土地の改良のためにした土盛り、地ならし、埋立て等の整地に要した費用の額

ハ.借地契約に当たり支出した手数料その他の費用の額

ニ.建物等を増改築するに当たり土地の所有者又は借地権者に対して支出した費用の額

 

10.償却費の計算


取得価額から控除する「償却費相当額」は、次のように計算します。


イ.事業の用に供していた資産の場合

※「経過総月数」に1か月未満の端数があるときは、1か月とします。


ロ.事業などに使用していなかった資産の場合
(取得価額、設備費、改良費)×90%×耐用年数の1.5倍の×(経過年数)
年数に応じる償却率  

※1「耐用年数の1.5倍の年数」に1年未満の端数が生じたときは、その端数は切り捨てて計算します。
2「経過年数」の6か月以上の端数は1年と、6か月未満の端数は切り捨てて計算します。

 

11.譲渡費用


イ.譲渡費用になるもの
譲渡費用には、資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、測量費など、資産を譲渡するために直接要した費用のほか、資産の譲渡に際して支出した次のような費用も含まれます。
イ.借家人などを立ち退かせるための費用
ロ.土地を譲渡するために、その土地の上の家屋を取り壊した場合のその取壊し費用やその取壊しによって生じた家屋の損失の金額
ハ.既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で他に譲渡するため、その売買契約を解除したことに伴う違約金
ニ.抵当権抹消登記費用
ホ.譲渡費用支払のための借入金利子


ロ.譲渡費用にならないもの
譲渡資産の修繕費、固定資産税などその資産の維持・管理に要した次のような費用は、譲渡費用には含まれません。
イ.相続登記費用
ロ.譲渡に伴わない立退料